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苦味:こどものじかん

  • 文/木村倫子 写真/田中青佳
  • 2015年3月16日
  • 読了時間: 2分

先日、お酒のイメージがあまりない友人が 「こどもの頃、はじめてビールを飲んでみたとき 『あ、おいしい』と思ったんだよね。苦くて」というのを聞いて へぇっと驚き、そして小さくドキッとしました。 お酒の味が好きなことと、お酒飲みかどうかは別の話ですから そうびっくりすることではありません。 ドキッとしたのは、大人の宴会に交じって 「おいしいねっ」と周りにアピールするわけでもなく 「あ、おいしい…」と思ってる女の子がパッと想像できたから。 苦味とこどもは、そうストレートに繋がるものではないのに。 私も、苦いものはこどもの頃から平気でしたが 単に好き嫌いがないだけでした。 いつの間にか好きになったので、劇的においしくなった日というのもありません。 おかげで苦味と付き合い始めの記憶は どれも幼くぼんやりとして、味のわりにやさしいものばかり。 庭のふきのとう、山のぜんまい、すぐそこの川を泳ぐ鮎のわた 苦味の強い手作りのマーマレード…… それらを今ほどいそいそせずに黙々と食べていました。 この「いそいそ」があった方が、苦いものは断然おいしいと思うのです。 これから大人の味を食べるぞ!食べましょう!という盛り上がりが。 まぁ苦味そのものが好きでなければ、どうもこうもありませんが。 「あ、おいしい…」と思った女の子は、苦味を楽しむ舌は持っていても 「苦いものを楽しむこと」をことさら意識したり、だれかに表現したりして 周りや自分を盛り上げるという思惑のない時間の中にいたんじゃないでしょうか。 そういう意味では、かつて黙々と食べていた自分も同じ。 別に純粋だとかではなくて そんな気持ちの静かさにも、ドキッとしたのかもしれません。 ふきのとうの天ぷらなんて、もうなかなか静かに食べられないなぁ! もっと淡い味ならともかく、苦味は難しい。 いつの間にか、いそいそする側に入り込んだ身としては あらよっと、今年もたくさん春の苦みを味わいたいと思います。

 
 
 

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