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苦味:大人の階段

  • 文/田中青佳 イラスト/木村倫子
  • 2015年3月9日
  • 読了時間: 2分

「苦くて旨い」がわかる舌になったのは、いつだったか。 遠い記憶を辿って出てきた、はっきりと覚えている最後の「苦くてマズイ」は、17歳。 当時好きだった5才上の男の人と、ファミレスで飲んだブラックコーヒー。 格好つけたくてブラックのまま飲んだのに、彼はさらりとミルクとお砂糖を入れていて、 「私は、まだ、背伸びの仕方すら知らないんだなぁ…」と情けなく思ったのを覚えています。 その倍の人生を生きている今となっては、なんとも爽やかな苦い思い出。 ただただ、かわいく感じます。 さらに思い出をなぞって、22歳。新卒で働き出した頃。

とってもハードな会社で、気合を入れないとどうにもやっていられなくて、

出勤途中に毎朝コーヒーを買っていました。 その時にはもう全くムリせず普通に、「コーヒーと言えばブラック」。

そして夜になればビールをガンガン飲み、ゴーヤーやエシャロット、山菜といった 苦くておいしいつまみを好んで食べていました。 この頃の私にとっての苦いものは、スタミナ食材であり渇を入れるためのものでした。

17歳から22歳。そのあいだ5年間。 たったの5年とも、5年もの間…とも言える微妙な期間だけれど、 味覚や姿勢の変化がなんともダイナミックで、我ながらちょっと笑えます。 よくよく考えると、苦いものというのは、たいていが大人の嗜好品。 それがおいしくなったというのは、大人の階段を昇った…と言い換えられるような気がします。 思えば確かに、その時期というのは、大人の世界に足を踏み入れた時期でした。 親の庇護の元生活していた子供が、初めて自分の食いぶちを稼ぐようになって。 でも実際は、大人の仲間入りした気分になっていても、まだまだひよっ子で、 「ホンモノの大人」を前にして、自身のいたらなさにヤキモキしたり、 若さの持つパワーで馬鹿なことをしてみたり…、いつだってもどかしくて、苦いことばかり。

特に恋愛面では、勢い過剰(!)で、いっつも傷ついてばかりだったような…。

改めて思い返すと、「苦い思い出」だらけですが、でも、とてもいい時代でした。 もう少し年を経ったら、きっと苦さなんて微塵もなくなって、むしろ甘い思い出になりそうです。 だって、おいしくなかったものがおいしくなるほどの成長をさせてもらえたなんて、すごい事だし。 なんだか今夜は、とびきり苦いものを食べたい気分になりました。 自分の歩いてきた道を舌で感じる。それもまた乙だと思うのです。

 
 
 

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