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フリー:甘い塩辛

  • 文/木村倫子 写真/田中青佳
  • 2014年7月24日
  • 読了時間: 2分

レシピを見ながら料理をしている時くらい、普段も控えめでいられたらいいのにと思います。 とりあえず言われたままの分量と手順で作り進め、味見をして微調整をする。 いきなり「こうした方がいいんじゃない?」とか言わない。余計な酒は足さない。 堅苦しくなんてありません。そこには、普段の名もない料理とは別の快感があるだけ。 まるで固まった筋肉を伸ばすストレッチのような。 3年ほど前、60代の母が90代の祖母からイカの塩辛を習い受けました。 それまで祖母の塩辛づくりは恒例行事でしたが、大量のイカを捌くのが大変になったからと 数年前から「もう今年で止める」を繰り返していたのです。 広島出身の祖母の料理は甘い。 嫁いだ先の茨城で、ちっとも方言を出さない祖母から 唯一西の文化を感じるのがこの味でした。 塩辛も、イカの刺身にワタを和えたぐらいの浅漬けでほんのり甘い。 私はこの塩辛が大好きで、祖母が元気な内に母をスキップしてでも この味を修得しなければと思い詰めていたわりに 何もしないまま、お裾分けを東京へ持ち帰るだけの日々が過ぎていきました。 だから、酒飲みでも食いしん坊でもなく センチメンタルに家の伝統やらを重んじるタイプでもない母が にわかに塩辛を受け継いだのは、多分に夫や娘のためであったわけです。 2代目の塩辛は、本人も気にしている通りさらに甘みが強いようですが 1年目にお裾分けしたお宅から、すぐに2年目の予約が入ってしまったと満更でもなさそうでした。 私が作ったら、きっともう少し肴っぽくなるでしょう。伊達に飲み歩いてはいません。 でもまだ2代目の味を尊重していたいと思います。 舌がレシピに従いたがる。 そんなときもあります。

 
 
 

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