夏:白いおこわ
- 文/木村倫子 写真/田中青佳
- 2014年7月23日
- 読了時間: 2分

「おこわ」で通じるでしょうか。赤くない赤飯のことです。 お盆に田舎の親戚を訪ねると、しばしばそのおこわと きんぴらごぼうと麦茶と漬け物あたりが出てきます。 それが何時であっても。 たっぷり食べさせることを重視したもてなしは 垢抜けない振る舞いとして、敬遠されることもあるようですが 豆の味が分かる薄味のおこわと、しょっぱいおかずの組み合わせは美味しくて ちゃっかりお土産まで包んでもらうことが私はしばしばあります。 この“たっぷり”に思わぬ場所で再会しました。 縁あって訪れた中央アジアはキルギスで、4世代が暮らすお宅にお邪魔したときのことです。 庭に出された長い座卓には、ビニールコーティングされたテーブルクロスが敷かれていて たくさんの大皿料理の間に、小さな揚げパン(ボルソック)が敷き詰められていました。 隙間を作らないことが大切だそうです。 絶対に食べきれない量は、年長のご夫婦がしてくれた正装と同じ歓迎の印 もともとキルギス人と日本人は顔がそっくりなこともあって 風に揺れる盆提灯や、木製プラスチック製が入り交じった回り灯籠を 思い出さずにはいられませんでした。 「食べ放題」と聞いても、心が動かないお年頃 量に重きをおいているわけではありませんが、洗練された食卓はプロにまかせたい。 家飲みの帰り際、あれやこれやと持たされるお菓子が嬉しいし 招待する側なら、ちょっと多めに作りたいもの。 誰に何を食べさせてもらったかを、全部見返すことができたら なかなかぐっときそうです。 ある友人が、新学期や顔合わせのある場所でかけられる第一声が たいてい「これ食べる?」なんだ、と言いました。 ガムやら飴やらを差し出した誰かの好意が想像できて、楽しくなる話です。 食べさせたい人というのは、きっとかわいい人でしょう。
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