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夏:南の島のカレーな一日

  • 文/田中青佳 イラスト/木村倫子
  • 2014年7月23日
  • 読了時間: 3分

何かを選択する時と、夏の訪れを五感で感じた時、 いつも思い出す食べ物と風景があります。 それは、スパイスたっぷりで、黄色と緑を混ぜたような不思議な色のインドカレーと さくさくとした食感と塩味が絶妙で、いくらでも食べられそうなチャパティ。 いかにもインド帰りな風体の男子2人によるワークショップで作ったもの。 今から10年ちかく前、多忙の果てに疲れ果てていた20代の私は 「とりあえず、こういう時は南だ!」と考え、沖縄へ向かいました。 どこに向っていいかわからず、何をしたいのかもわからなくなっていたから、 泊まっていた安宿の主人から「インド帰りの2人組が、カレーのワークショップをやるよ」と 誘われた時には、流されるまま大した期待もせず、参加することを決めたのでした。 (その後10年以上、何度もかみ締める思い出になるだなんて、チラリとも思わなかった!) その時のカレーと、作るための不思議に長い時間のことは 言葉にすると、まるで詩のようになってしまう。 何度もかみ締めすぎて、自分の中で、そうなってしまったのです。 きっといつか自分の生命の火が消える時にも、詩を詠むように偲ぶに違いありません。 *** 男たちは石臼でスパイスを砕き、豆を茹で 女たちは野菜をざくざくと大らかに刻む。 とりとめのない、おしゃべりの内容は、天気のことや海のこと。 そんな大人たちの周りを、子どもたちがキャッキャと声をあげて、駆け回る。 誰かが手を止めても、誰も、何にも、思いもしない。 時が止まっていると錯覚しそうなほど、ゆったりと、ただただ過ぎていく。 裸足の足元には、ひんやりと冷たい木の床 大きな窓からは、突き抜けそうに青い空と、緋色のブーゲンビリア 頬を、やわらかな風がすべりゆく スパイシーなカレーの匂いと、甘いカフェラテ 何時間もかけ作ったカレーを、たった数分で腹におさめ おいしかったねと共感して、それだけで終わっていく”ただの一日”。 *** 今、東京で、幼子を育てながら自営で働く私は、一日で、 とんでもない量の「いろんなこと」をこなしています。 洗濯機をまわして、米を研いで、パソコンに向って、おかずをこしらえて… でも、あの風景とカレーの味を、確かに自分に刻みつけたから、 私はいつも、あの旅の中の特別な一日に戻ることができるし、 「子の歩む速度で一緒に歩く時間」を守れている。 口に入れたら消えてしまう食べ物のワークショップだったから なおのこと尊いものとして残っているのかもしれません。 いつかどこかで、あのエスニックな男子2人組に出逢えたら、 心からのありがとうを伝えようと思います。

 
 
 

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