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白:お豆腐屋さーん!

  • イラスト・文/木村倫子
  • 2016年1月18日
  • 読了時間: 2分

2年間だけ、豆腐売りのおじさんから豆腐や油揚げを買っていたことがあります。 住宅地の奥に公園があって、そのすぐ脇のアパートに住んでいた頃のことです。 とても滑らかな木綿豆腐で、ぼろっと崩れる木綿では荒々しすぎ プリンのような絹豆腐では頼りないとき たとえば湯豆腐にぴったりだと、たびたび美味しくいただいていました。 引っ越したばかりの頃は、ボウルを持って飛び出して行くのが ドラマか何かの真似のようで恥ずかしく

お豆腐屋さんのラッパと、ご近所さん達が出てきておしゃべりする声を 窓越しに聞くばかりだったのですが。 一帯は、大きなお屋敷と(たぶんお屋敷の住人が大家さんの)古いアパートが混じり合った地域で、

お豆腐屋さんを囲むのはアパートに住む人が多いようでした。 めいめいの買い物が終わるまで、公園の前はざっくばらんな言葉が飛び交う社交場となり 普段はすました住宅地がにわかに活気づいたものです。 勝手が分かってきた私は、ベランダからお豆腐屋さんを呼び止めてから表に出られるほど図々しくなり、大きなお札しか持っていなかった日は「次でいいよ」と言ってもらって ツケでおいしいお味噌汁を啜ったりできるほどに。 思えば、あの頃がわたしと豆腐の蜜月でした。 アパート立て壊しのため、再び引越すことになったのです。 ひと駅ほど離れた転居先には、昔ながらの店構えをした豆腐屋がありました。

やや遠くから眺めていたら、中から出てきたのはあの豆腐売りのおじさんではありませんか。

店で配達の仕事をしているようです。 いずれご挨拶しようと、自転車を漕ぐ姿をそのときはただ見送ったつもりでしたが

配達区域が違うのか、豆腐売りの自転車に出くわすことのないまま 2年も3年も日は過ぎて、とうとう豆腐屋そのものが店を畳んでしまいました。 店主は商売抜きでも社交家らしく、お店を普通の住宅に立て替えた今も

道端で男性ながら井戸端会議に花を咲かせています。

にぎわいの横をすり抜けながら、ときどき公園脇の元ご近所さん達のことを思い出します。

今もわいわいやっていてほしいなぁ!

あれはたのしい豆腐仲間でした。

 
 
 

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