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出汁:薄きつね色の日曜日

  • イラスト・文/木村倫子
  • 2015年11月16日
  • 読了時間: 2分

春風亭昇太がうんと若かった頃 「お次は、落語会のプリンスが演ずるメルヘン落語でございます」なんて紹介されて おでんがしゃべる新作落語を、確か『笑点』でやっていました。 新作も古典も分からない小学生だった私にも、現代の話なことがめずらしく なによりとても可笑しかったのですが、タイトルを覚えておらず 10年も20年も「面白かったなぁ……」と思い返すばかりでした。 ふと思い立ち、インターネットの力であっさり解明したのはつい先日のこと。 柳家小ゑんの「ぐつぐつ」または三遊亭圓丈の「新ぐつぐつ」の どちらかだったというところまで分かりました。※1 早速、これまたあっさりダウンロードできた「ぐつぐつ」の方を聴いてみました。 舞台は目蒲線の西小山。※2 家路を急ぐ勤め人が行き交う駅前から商店街に入ると、おでんの屋台が現れます。 ここでくだを巻くのは、人間でなくておでんの方。

屋台の真ん中で揺れるたっぷりのおつゆから、おでんの声が聞こえてくるのです。 昨日も一昨日も売れ残ったイカ巻きは、ぐずぐずに煮えて 中身のイカは抜け、抜けたイカは酔っぱらいに食べられ踏んだり蹴ったり。 こんにゃくは、かわいいはんぺんに芯のないひとは嫌いだと振られ おつゆの中は、しみったれたおでん種の嘆きで大にぎわい。 話の合間合間に「ぐっつぐつっ」と擬音が入る度、映画のように場面が切り替わり 練り物からは出汁が出て、おつゆの味も夜もどんどん深くなっていって…… と、そんなお話なのですが、30年弱ぶりの「ぐつぐつ」は 正直あたためすぎた記憶に比べたら感動に欠けました。 けれども、わくわくした日曜の夕方を丸ごと思い出させてくれました。 想像するしかなかったおでんの屋台も西小山も、観づらい高さにあったテレビも

これもアリなのか!という思い出し出のある驚きも セピア色ならぬ薄きつね色のおつゆに浸っている、そんな夢を見た気分です。 ※1「ぐつぐつ」をアレンジした話が「新ぐつぐつ」。 ※2 目蒲線は、現在目黒線と東急多摩川線に分割されています。

 
 
 

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