ワイン:森へ~日本酒党の隠しワイン~
- 写真・文/田中青佳
- 2015年10月19日
- 読了時間: 2分

もっぱら日本酒orビールのわが家。食卓にワインが並ぶことは、ほとんどありません。
食事は和食ばかりだし、冷蔵庫に並ぶおつまみも、塩辛とか味噌漬けとかそんなのばかり。
私にとってワインは、今なお「外で飲むおしゃれな飲みもの」です。
けれど実はたった一本だけ、時々、こっそり買うワインがあります。
それは、安旨ワインの代表格のひとつでもある銘柄のオーガニックのもの。
スーパーや時にコンビニなんかでも見かける自転車のラベルの…と言ったら
ワインをちょっとでもたしなむ方なら、おわかりになるでしょう。
出会いは、ある春先、森で開かれた持ち寄りパーティー(という名の呑んだくれの会)。
青々と茂る芝生の上に、日本酒・ワイン・つまみがズラリ並ぶ贅沢な光景の中でした。
長年ソムリエールをしていたという女性が
「外飲みには、これ。どこででも買えて、それでいて優秀なのよ」と教えてくれました。
驚きは、そこからでした。
へぇ~と頷きながらも、そこまで期待もせずに、口に含んでからのこと。
なんだか青臭いな~好みじゃないな~と思いながら、ごくりと飲み込んで…数秒後。
ふぅっと風が吹いて…その時!
アレ?おいしい!?
見事なほどに、印象が変化したのです。
その瞬間の驚きと言ったら!
草木の香りとマッチして、口の中が一気に春色へと変わりました。
これ、森の味がする!
その納得感とほのかな感動は、そうそうあるものではありませんでした。
以来、そのワインは、いつも私を森へ連れていってくれるパートナーになりました。
時に、本当に森にいる時以上に、森らしい時間の中へ。
凛と澄んだ空気。
やわらかな土の感触。
風が運ぶ様々な匂い。
鳥のさえずり。
やさしい木々の存在。
包まれているような安心感。
醸された場所と、飲んだ環境がリンクする、お酒ならではの出逢い。
それは、数十年の酒人生(なんて男らしい単語!)に時たま訪れる幸福です。
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