パン:正直なパン屋イラスト・文/木村倫子2015年9月21日読了時間: 2分気になるパン屋があります。 イートインコーナーが出来たり、二階がカフェになったり 軒下に子供服コーナーが出現して消えたり…… とにかく業務形態が落ち着かないのです。 二階のカフェがリニューアルされたとき パン屋のレジで、とうとう店主に話しかけてしまいました。 「ラーメン屋さんになったんですねー!」 その日、表には白地に大きく“麺”とレイアウトされた看板が出ていました。 新しくラーメン店が入居したわけではなく 一階のパン屋さんによる経営であることが分かるシンプルなデザインでした。 粉ものつながりと思えば自然なことなんでしょうか。 たぶんベテランであろう店主は、パンを袋に詰めながら 困ったような照れたような様子で「……なんかもう、よく分かんなくなっちゃって!」と笑いました。 やり方をコロコロ変えるなんて、上手くいっている状態ではあまりしないこと。 いつも空いてるし、もじもじしてる場合!? とも感じましたが あまりに取り繕いのない返答に気が抜けて、気付けばこちらも笑っていました。 それが去年のことだったでしょうか。 その後も相変わらず小さなリニューアルを重ねているように見えていたある日 サッシの引き戸が、木製の暖かみを感じるドアに変わっていました。 内装も変えた様子で、入ってみると今までにない活気。 やきもきしていたわりに、顔見知りの常連というわけではない私は 何も話さずパンを買って商店街へ出ました。 あれなら当分つぶれなそう。 強がらず、(こう言っては難ですが)ぐにゃぐにゃした、新鮮な切り抜け方を見せてもらえて 得した気分の帰り道でした。 肝心のパンは、癖がなく飽きない味です。#2nd
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