top of page
後でもう一度お試しください
記事が公開されると、ここに表示されます。
Recent Posts
Featured Posts

お弁当:出先でスープを

  • 文/木村倫子 写真/田中青佳
  • 2015年4月19日
  • 読了時間: 2分

お弁当箱売り場が好きです。 デザインが豊富で、ぼんやり眺めるだけでも十分楽しめますが 円柱状で三段重ねのランチボックスには、ささやかな思い出があって 見つけると、ついあれこれ吟味してしまいます。 私は小学校入学と同時に、市街地から父の田舎へ引越したのですが 引越し先のすぐ隣が製材所でした。 お昼休みのサイレンや、休憩が10時と15時にきちんとあることや 作業着のおじさん達がめずらしく、おっかなびっくり観察していたところ みんな円柱状のお弁当箱を持っていることに気がつきました。 それは三段に分かれていて、一番下の段にはお味噌汁が入っています。 お弁当にスープ! 平べったいアルミのお弁当箱しか知らなかった私には、けっこうな驚きでした。 しかも保温効果が効いていて、熱々なのです。 そういう感動(?)は尾を引くもので

いまでも必要のないランチボックスへ、ふっと手を伸ばしてしまいます。 熱そうだったお味噌汁と気のいいおじさん達のことを思い出しながら。 お弁当にスープといえば、編集者として勤めていた頃のこと 残業の合間に、夕ごはんを食べる先輩の様子も良いものでした。 帰ってから何か食べていたら遅すぎるし……と たいがいの人が適当な時間に、適当な食事をとっていました。 とっくに別の部署の灯りは落ちていて、なんとなく部屋は暗いし眠いし どんよりした頭で、隣の席を見ると 先輩が机にハンカチを拡げ、コンビニで買ってきたおにぎりとお惣菜とカップスープを きれいに並べて食べていました。 突然目の前に現れた小さな食卓に 「間に合わせのごはんじゃないみたい!」と私がびっくりしている間にも 先輩はそれらをさっと片付け、今度はデザートにヨーグルトを食べ始めました。 「こういう人が長続きするんだなぁ……」とさらに感心したものです。 感心だけして、ほどなくフリーランスになってしまったわけですが 締め切り前の散らかった部屋でごはんを食べるとき あの日のことを思い出して、ちょっと一角を片付けるようにしています。 そして、スープが無理ならお茶でも 湯気が出るものを添えて、休憩を始めます。

 
 
 

Comments


Follow Us
Search By Tags
Archive
  • Facebook Basic Square
  • facebook-square

© 2014 by Aonori.

bottom of page