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贈り物:人生の彩り

  • 文/田中青佳 イラスト/木村倫子
  • 2014年12月8日
  • 読了時間: 2分

食べものの贈り物では2つ、特に印象に残っているものがあります。 会社員最後の日に、上司や同僚がくれた「得月(朝日酒造の最上級ランクのお酒)」と 独立を決めたときに、古くからの友人たちがくれた「社長の酒(そういう名前のお酒)」です。 お酒にこめられた「お疲れ様」と「これからガンバレ!」、 その想いをしっかりと自分に刻み込みたくて、 どちらも、誰も呼ばず、ひとりっきりで呑みました。 小さなお猪口の中で美しい液体がゆらゆら揺れていたことも いつも口にするお酒よりも上品な香りがしたことも

「この味は一生忘れちゃいけない。」そう思ったことも 7年近く経つ今も、はっきりと覚えています。

よく食べ物や飲み物を贈るときには「消えもの」という言い方をします。 物よりは好みに気を遣わなくていいし、残らないので 贈る方も贈られる方も気が楽という意味のよう。 けれど、自分の好みや心境、シーンにピタッとあった食べ物というのは 時に、物よりもずっと大きなインパクトを残します。 それは、私が食いしん坊だから…という理由だけではなくて 食べ物や飲み物の贈り物は、そのまま「いただく時間のプレゼント」だから。 思い返せば私も、先に挙げた2本の日本酒以外にも たくさんの素敵な食べ物の贈り物をもらってきました。 ボロボロになっているときに突然届いた、手詰めもなか。 結婚式の日「後でホテルで食べてね」と渡された、抹茶のラングドシャ。 誕生日に友達が作ってくれた、私の顔がチョコレートで描かれたケーキ。 産後の体がつらいときにもらった、手作りのくるみゆべし。 子供の誕生記念に「20年後に呑むように」と沖縄から届いた、泡盛の甕。 どれもあったかくて、思い出すだけでほくほくします。 一瞬で消えてしまうものだからこそ深く刻まれる、人生の大事な彩り。 食べものは、愛そのもの。

これらの贈り物を思うとき、私は、これから先何があっても生きていける、 そう思うのです。

 
 
 

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