酒:日本酒愛
- 文/田中青佳 イラスト/木村倫子
- 2014年9月8日
- 読了時間: 2分

私にとって日本酒は、特別な飲み物です。
とてもとても、特別。
「アルコールは、不器用な大人のために神様がくれたギフト。 とは言え嗜好品なんだから、四の五の言うのは野暮!」 そう思っている私ですら語りたくなってしまうお酒が、日本酒。
生まれ育った自国の誇るべき文化・技術…なんて戯言はさておいて その気品といい、繊細な味の美しさといい、日本酒は特別です。
日本酒ほど、ゆったりとした時の流れに相応しく、 感情にそっと寄り添ってくれるものは、他にはありません。 私には「神の飲み物」のような気すらする。
そんな日本酒は、だからか、そんな簡単には「本当の姿」を見せてくれません。 好きで好きで、飲んで飲んで、やっとチラ見せしてくれるというか、 具体的イメージを挙げるとするなら、妙に腕のいい小料理屋のママ。 通い詰めて慣れてくると、サラッと名前を呼んでおしゃべりしてくれるけど、 ちょっと足が遠のくと、すぐまた敬語に戻っちゃう。 (私の中では、10年以上前によく行っていた新橋の割烹の美人な中年ママ)
気取ってはいないけど気安くなくて、じっと眺めて愛でて、味わって やっとじわじわ本当の姿を現してくれるような…
そんな日本酒の奥の深さ、実を言うと、この数年味わえていません。 子供を授かってからというもの、じっくり日本酒を味わう余裕も時間も機会もなく。 松尾様にもバッカスにも愛されてる!と本気で信じ、フライング気味で 20歳できき酒師の資格もとってしまった私であっても、せわしくては 日本酒の「いい顔」は、見せてもらえないのです。 …やっぱり日本酒は、すごい。一筋縄ではいきません。
「日本酒」、このテーマが決まってから、いろんなエピソードが頭をよぎったのに 筆の動くままに手を動かしたら、結局、日本酒の奥深さを切々と語るだけの 妙にもの悲しいラブレター(しかも片思いの)になりました。
今はただ、これからまた新たに日本酒と出逢い、呑みつくして、そして 幸せな関係を築いていくしかない!と改めて腹をくくっています。 今のこの修行のような育児の日々を経て、またゆったり味わえる日がきたら きっと、さらにクリアな夢のような世界を見せてもらえると信じて。
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