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本:食べていない思い出の味

  • 文/田中青佳 イラスト/木村倫子
  • 2014年8月11日
  • 読了時間: 2分

「思い出の味」は、いつも郷愁と甘い情感をくれるけれど 「実際には食べていない、思い出の味」もまた、心に一際強い光景を残します。 小学生低学年の頃、いつもワクワクしてチャンネルをあわせていた番組は 「ミスター味っ子」というアニメでした。 味皇(あじおう)という、謎の食通のおじいさんのリアクションが どんどん派手化していくことで当時話題を集めたようですが、 子どもの私はそんなこと露知らず。 ただただ、主人公の少年料理人陽一くんが、ひたむきな心と天才的なセンスで 傲慢なプロの料理人や、善良な飲食店をピンチに追い込む悪どい料理人を次々と打ち負かし

一方、少年料理人たちとは爽やかに熾烈なライバル争いを繰り広げる様子などに夢中になって、毎週毎週、熱いまなざしで見つめていました。 今思い返しても、陽一くんの料理は、とんでもなくトリッキー。 当時の私には、想像すらできないようなものばかりでした。 材料だって、無菌豚に根昆布、冬虫夏草、幻の○○…とかばっかり。 でも、すごく面白くて、魅力的で、わくわくしたのです。 食べたこともないし、想像もつかないからからこそ 「そんなすごいものが、この世にはあるのかぁ…食べてみたいなぁ」と。 その幼少の経験が、今の読書傾向にも影響をしているのか、 私は今も「食の本やマンガ」を手放せません。 「きのう何食べた?」の「シロさんがチャチャっと作る、肉みそあんかけチャーハン」、 「深夜食堂」の「まゆみちゃんお得意の、さんまの缶詰の蒲焼丼」、 「日々ごはん」の「旬の大根や蕪で作る、だしをひかない味噌汁」etc… 言葉や絵が五感に語りかけ、本物以上に美味しそうな匂いや照りを放ち、 私の食指を動かします。 実際に食べてウホ~ッ♪とするのもいいけど、食というものは、夢想するのもまた幸せ。 世に数多とあるグルメ雑誌にレシピ本、エッセー、マンガ。 まさに玉石混合な食本の世界だけれど、食いしん坊な私はまた「食べてみたぃぃぃぃ!」と 唸る快感を味わいたくて、きっと、また新たなるものを買い求めてしまうのでしょう。

 
 
 

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